039362 ランダム
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花ごよみ

花ごよみ

ちいさな おはなし

月と 風と たんぽぽの おはなし

窓


むかし むかし ずっと むかし
まだ 月のまほうが 人々に信じられていたころのこと


ひとりの娘と ひとりの男が
叶わぬ恋に おちました

想いは 日増しに 強く 大きくなってゆき
とある 満月の夜
人目を避けたふたりは 街を離れ
銀の光の粉の降る 小高い丘にのぼりました

『僕は 風になりたい』
大きな月を見上げ 男が 言いました
『風になって 世界中を駆け巡りたいんだ』

『それでは私は お日さまに』
娘は しずかにほほえみました
『お日さまになって 旅するあなたを ずっと見守りましょう』

苦しい想いに耐えかねた 哀しい恋人達は
自由なるものへと 生まれ変わることを願って
ひっそりと 次なる世界へと 旅立ってゆきました

りぼん


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